スナップオン 薄口スパナ (Snap-on JM1011)

「え? そんなことまで書くんですか?」

メーカー技術者の端くれだった頃、上司に配線の通し方を図面に反映するよう指示された。

配線の長さは決まっているし、接続する先も一箇所だ。誰が作業しても同じ通し方をすると主張したが却下。私は、近年の日本のモノづくりと、その未来を見た気がした。

職人をロボットのように捉え、感覚的なものを排除して生まれる均質化の手法は、日本人気質にそぐわないブルーカラーと呼ばれる労働者区分けを連想させる。出来上がる製品に「味がない」といわれる所以かもしれない。

そして、感覚的なものを削がれた製品は模倣を容易にするから、ハイクオリティが売りだった日本製品を上回る製品が、中国をはじめアジア各国で作られ始めているのも自然なことなのだろう。

一方、品質が安定しているとはお世辞にも言えないイタリア製の自動車は、日本の自動車とは対照的で、感情を刺激し
、魅力的だ。

模倣が極めて難しい工業製品だか、イタリア人の特別な感性が魅力を出しているという考えは、実は間違い。

なぜならば、マセラッティ クアトロポルテ や エンツォ フェラリ は邦人デザイナーが手がけたものだからだ。

外観の格好よさだけでなく、音響を含む内部の仔細にいたるまで、図面に反映しない職人の感覚的な要素を大切に、そして認めている魅力なのかもしれない。

写真は Snap-on のロートルクスパナ。

魅力ある米国製の Snap-on は、意外と製品のバラツキがあることでも有名だ(但し、品質保証は極めて手厚い)。

Hand Tool Master: