「え? そんなことまで書くんですか?」
メーカー技術者の端くれだった頃、上司に配線の通し方を図面に反映するよう指示された。
配線の長さは決まっているし、接続する先も一箇所だ。誰が作業しても同じ通し方をすると主張したが却下。私は、近年の日本のモノづくりと、その未来を見た気がした。
職人をロボットのように捉え、感覚的なものを排除して生まれる均質化の手法は、日本人気質にそぐわないブルーカラーと呼ばれる労働者区分けを連想させる。出来上がる製品に「味がない」といわれる所以かもしれない。
そして、感覚的なものを削がれた製品は模倣を容易にするから、ハイクオリティが売りだった日本製品を上回る製品が、中国をはじめアジア各国で作られ始めているのも自然なことなのだろう。
一方、品質が安定しているとはお世辞にも言えないイタリア製の自動車は、日本の自動車とは対照的で、感情を刺激し
、魅力的だ。
模倣が極めて難しい工業製品だか、イタリア人の特別な感性が魅力を出しているという考えは、実は間違い。
なぜならば、マセラッティ クアトロポルテ や エンツォ フェラリ は邦人デザイナーが手がけたものだからだ。
外観の格好よさだけでなく、音響を含む内部の仔細にいたるまで、図面に反映しない職人の感覚的な要素を大切に、そして認めている魅力なのかもしれない。
写真は Snap-on のロートルクスパナ。
魅力ある米国製の Snap-on は、意外と製品のバラツキがあることでも有名だ(但し、品質保証は極めて手厚い)。
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まっちゃん says
お初に書き込みさせて頂きます。
前々から大変興味深く拝見させていただいております。
御記述の薄口スパナ、私も所有しております。個体差のバラつきにより、私はバンセールスの在庫の中より最もスパナ部の間隔の狭いものを選び研磨することで自分にとってジャストなクリアランスに調整して使用しています。しかしながら、やはり魅力ある製品は違いますよね。私は手に持った瞬間に購入を決意していました。
ハンドツールマスター says
まっちゃんさん
コメントありがとうございます。ここ最近、こちらの工具ブログ更新が滞っているにもかかわらず、大変励みになります。
手に持った瞬間、目に留まる瞬間に伝わるホンモノ感はすばらしいと思います。
人が作り出したモノには、人の感性が宿っているのだと思います。それに共感するから理屈や価格などに左右されず購買につながるんでしょうね。
いわゆる「感動」なんですね。
私はモノを作る仕事ではありませんが、同種の感動を伝えられるような仕事をしたいものです。